保護具着用管理責任者

目次

はじめに

働く人の安全と健康を守るため、2024年4月から「保護具着用管理責任者」の選任が義務化されました。この新しい制度について、その背景から具体的な職務内容まで、分かりやすく解説します。

保護具着用管理責任者とは

保護具着用管理責任者とは、化学物質のリスクアセスメントに基づいて、労働者に保護具を使用させる事業場で選任が義務付けられた責任者のことです。適切な保護具の選択や使用状況の管理、保守管理など、労働者の安全と健康を守るために重要な役割を担っています。

なぜ義務化されたのか

2023年から化学物質の管理方法の方針が転換し、企業には自律的管理が求められるようになりました。従来の特別規制対象物質のみの管理から、より幅広い化学物質を対象とした包括的な管理体制の構築が必要となったためです。

選任が必要なケース

保護具着用管理責任者の選任が必要となるのは、以下の場合です。

1. リスクアセスメント結果に基づく場合

化学物質のリスクアセスメントを実施した結果、呼吸用保護具や保護手袋などの保護具を使用することになったとき

2. 作業環境測定結果に基づく場合

作業環境測定の評価結果が第三管理区分に区分された場合などで呼吸用保護具を使用することとなったとき

対象となる事業者

化学物質を含む洗浄剤等を使った清掃業務や設備管理業務を行っている事業者は、基本的に義務化の対象となります。製造業だけでなく、ビルメンテナンス業なども対象に含まれます。

職務内容

保護具着用管理責任者の具体的な職務内容は以下の通りです。

主な職務

  • 保護具の適正な選択に関すること
    • 作業内容や化学物質の特性に応じた適切な保護具の選定
    • 保護性能や使用条件の確認
  • 労働者の保護具の適正な使用に関すること
    • 正しい着用方法の指導
    • 使用状況の監視と管理
    • 労働者への教育・訓練の実施

その他の重要な業務

  • 保護具の保守管理
  • 交換時期の管理
  • 保護具の性能確認
  • 関係書類の作成・保管

選任要件

知識・経験を有する者

保護具着用管理責任者は、「保護具に関する知識及び経験を有すると認められる者」から選任する必要があります。具体的には以下のような方が該当します:

  • 労働安全コンサルタント
  • 労働衛生コンサルタント
  • 作業環境測定士
  • 衛生工学衛生管理者
  • 第一種衛生管理者
  • その他保護具に関する専門的知識を有する者

教育の受講

上記の要件を満たさない場合は、厚生労働大臣が定める保護具着用管理責任者教育を受講した者を選任することが義務となります。また、要件を満たしている場合でも、教育を受講することが推奨されています。

選任手続き

選任時期

選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任する必要があります。

周知義務

選任したときは、当該保護具着用管理責任者の氏名を事業場の見やすい箇所に掲示すること等により関係労働者に周知させなければなりません。

選任人数

事業場の状況に応じて必要な人数を検討することが可能です。

保護具着用管理責任者教育について

教育内容

厚生労働大臣が定める研修では、以下のような内容が含まれます:

  • 保護具の種類と特性
  • 適正な選択方法
  • 正しい使用方法
  • 保守管理の方法
  • 実技指導

受講対象者

保護具着用管理責任者への選任が見込まれる者が対象となります。

実技の実施

教育では実技も行われるため、受講時には保護具(特に保護マスク)を受講者数分準備する必要があります。

まとめ

保護具着用管理責任者の選任義務化は、労働者の安全と健康を守るための重要な制度改正です。該当する事業者は、適切な人材の選任と必要に応じた教育の受講を進め、労働安全衛生の向上に努めましょう。

化学物質を扱う現場では、この新しい制度を正しく理解し、適切に運用することで、より安全な職場環境の実現につながります。不明な点がある場合は、労働基準監督署や専門機関に相談することをお勧めします。

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